5月1日、コロナ禍で恐れていた知らせを受け止めることになりました。
「田中宏和さんが、天国にいってしまった。」
1週間後の渋谷のラジオ「渋谷の田中宏和」に2年ぶりのゲスト出演をお願いしていた、
86番目の田中宏和さん、大阪の「ミニバンの田中宏和さん」から返信が無いので、
「いつもはレスが1日空くことは無いからおかしいな」と思い、
Facebookのプロフィールページを確認してみたら、
ボランティア活動を通じたミニバンさんのご友人、川畑恵子さんが急逝を報じられていました。
あまりのことに驚き、事実と思えず、思わず見ず知らずの川畑さんに連絡を取って確かめたところ、
先月4月22日に新型コロナウィルスにより50歳で亡くなったとのことでした。
もともと先天的な骨形成不全の障害をお持ちで、
5歳から車椅子生活を続けて来られ、
今年の2月に車椅子から転落、骨折のため入院されていました。
無事に3月末に退院され、
5月から仕事にも復帰されると知ったので、
快気お祝いも兼ねてひさびさのラジオの収録でお話しするのを楽しみにしていたので、
まったく信じがたい、受け入れがたい事実でした。
地域社会への貢献に熱心に取り組まれてきた田中宏和さんの命を奪うとは、
ウイルスは残酷です。
50歳の人生は短すぎます。
出会いは2012年7月の田中宏和運動関西地区大会でした。
前年のギネス世界記録を狙った田中宏和運動全国大会2011で、
事前にギネスワールドレコーズから聞いていた、
同姓同名の集い(same name gathering)の新設の記録カテゴリーで、
50名以上なら世界一認定とのハードルをクリアした、
71人の田中宏和さんが東京の会場に集結したものの、
本審査で却下。
2005年にアメリカの実業家マーサ・スチュワートが、
自身の名前を冠した『マーサ!』というNBCのテレビ番組の企画で、
164人のマーサ・スチュワートが集まったという記録が発見されたとのフィードバックを受けました。
ならば、と、心機一転。
全国を回るぞと大阪、福岡、名古屋でそれぞれ関西地区大会、九州地区大会、中部地区大会を開催したのでした。
予約をしていた場所が大阪梅田のエレベータの無い2階の居酒屋で、
初対面の田中宏和さんの車椅子を初対面の田中宏和さんたちが担いで、
「ミニバンの田中宏和さん」を会場に運んだことを鮮烈に覚えています。
これぞ人類愛というか、同姓同名愛。
人間とは、名前が同じというだけで、こんなに他人に優しくできるものなのか。
深く感じ入ったこの出来事は、27年に渡る田中宏和運動史においても、
思い出のベストテンに確実にランキング入りするものでした。
さらに三たびの挑戦となった、田中宏和運動全国大会2017では、
「ミニバンの田中宏和さん」自ら、まさにミニバンを大阪府羽曳野市から運転して、
ご両親、奥様、娘さんご夫妻、お孫さんの4世代で東京の渋谷の会場に来場されました。
そのバイタリティ、行動力、田中宏和愛に打たれました。
2015年にはご自身が主演となった『ミニバンライダー 』というドキュメンタリー映画が完成しました。
「田中宏和さんの中でも映画の主演をした田中宏和さんはいないでしょ?」と、
映画のDVDをいただきました。
「障がい者といってナメたらアカんで!」、いつもそう言わている気がしていました。
わたくしの中で「ミニバンの田中宏和さん」とのお付き合いの中で、
社会のダイバーシティ&インクルージョンを学ばせてもらっていました。
連絡先となっていたミニバンさんのご両親のご自宅に、
一般社団法人田中宏和の会から供花の手配をして、
急きょ「ミニバンの田中宏和さん」がゲスト出演するはずだった放送回を
追悼番組として企画・構成することにし、
収録の前日にお悔やみのお電話をご実家にかけました。
電話口にお出になったのは、
お母様、田中すずこさん、74歳でした。
「このたびは息子がご迷惑をおかけしまして」と低姿勢にお答えいただき、
恐縮過ぎて言葉がうまく出ませんでした。
3月末に骨折から退院でき、自宅療養していたところ、
2週間後の経過観察の病院での診察の前日に発熱され、
PCR検査の結果、新型コロナウィルスの陽性反応が出たそうです。
昨年から肺が弱っていて地元の呼吸器系の病院に通っていらしたらしく、
うまくその病院のベットに空きがあったものの、
あっという間に重症化となり、
大阪市内の重症患者対応の病院に移られたものの、
発熱から10日後の22日にお亡くなりになり、
「戻ってきた時は骨になってました」と。
「病院の方々には本当によく対応していただき、
見舞いに行けない家族のために電話やLINEで病状を都度都度連絡してもらって、
感謝しかないです。
コロナは本当に怖い病気です。
特に若い人たち、不要な外出は本当に避けてくださいとラジオで呼びかけてください」と、お母様から切実な願いを受け止めました。
「宏和は、田中宏和の会が好きでした。」そして、「田中宏和の会は、続けてください」とも。
今日、5月11日(火)12時〜12時55分で、
渋谷のラジオ『渋谷の田中宏和』「ミニバンの田中宏和さん追悼番組」がオンエアされました。
ミニバンの田中宏和さんの50年の熱い人生を伝え、残したく、ラジオ番組にしました。あらためてラジオという音声メディアの魅力は、「姿が見えないけど、声が聴こえる。」というところにあると気づきました。
収録で2019年にゲスト出演してもらった音声を流すと、
本当にご本人が生き生きと話しているような気がしたから不思議です。
「亡くなった田中宏和さんとの対話」がコンセプトの番組になりました。
ここに、アーカイブのリンクを貼っておきます。
https://note.com/shiburadi/n/nea4a6fcc781a
お聞きいただけたらうれしいです。
また今回の収録のために田中宏和さんたち30名弱からの追悼メッセージをいただきました。
その中からミニバンの田中宏和さんとは大阪での田中宏和忘年会を通じて親交のあった、
しかし、わたくしは初対面の154人目となる「ポッキーの田中宏和さん」と、
リモート収録でお話しすることができました。
これも「田中宏和の会」が大好きだったミニバンの田中宏和さんが、つないでくれたご縁ですね。
番組の最初に、ミニバンさんの友人の川畑さんが、
Facebookの訃報を知らせる投稿で引用されていた、
大阪府立高校での『ミニバンライダー 』上映会後の
高校生からの質問に応じた「ミニバンの田中宏和さん」の回答が紹介されていました。
こちらにもコピー&ペーストして記録に残したいと思います。
上映会に呼んでくださり、ありがとうございました。そして素敵な感想と楽しい質問、いっぱいもらえて嬉しいです。遅くなりましたが、質問に答えました。もしかしたら「自分の質問に答えてないやん」があるかもしれませんが、お許しください。感想文を読んでいると、もっともっと皆さんと話していたいと思いました。
田中宏和・自分で耐えられないほどの悲しい時や苦しい時はどうしているか・ネガティブになってしまう時にどうやって立ち直っているか・今までしんどかった時、どうやって乗り越えてきたか↓悲しい時、苦しい時、ネガティブになってしまう時、しんどい時、これまでにいっぱいありました。人はそういう環境からすぐにでも脱出したいと考えます。もちろん私もそうです。でも、もがいてももがいてもダメな時はあります。そういう時こそ、深呼吸して冷静になって、時にはジッとしていることも大切だと思っています。もがいてもダメな時は流されるようにしています。その中から何か光が見えてくる時もいっぱいあります。まずは焦らないことです。でも諦めてしまうと光が見えた時に見落としますので、前向きな気持ちは忘れないことです。何でもすぐにうまく結果が出るわけではないので、時には「耐える」「じっとする」ことも大切です。・どうすれば自分に自信を持って行動できる人になれるか↓自信を持って行動には、まず自分が本当にそうしたいという行動する前の気持ちが大切だと思います。人に言われたからするとか、みんながそうしているからするというような流れで取る行動は自信を持って行動しているとは言えないと思います。・49年間で一番大変だったこと、しんどかったことはなんですか↓一番、大変でしんどいことは身体の痛みとの闘いというか付き合うことです。身体の中でどこも痛くなく終わる日はありません。「今日はここが痛いな」と思うのは毎日のことです。・足の事でつらいことや辞めたくなった事はあったか。なぜそんなに楽しそうに過ごしているのか↓足の事で辛いことは実は歩いたことがないので「歩けない」ことではなく「痛い」ことです。私の場合、特に足に骨折が集中しているため骨の成長もままならず、変形していますし痛いです。辞めたくなるというか、「足なかったら楽かなぁ」とか「感覚神経がないほうがいいや」と思ったことは何度もあります。でも「楽しそうに過ごしている」と感じてもらえるのは、そこにこだわり続けても何も解決しないし、前には進めないから痛みとも付き合いながら楽しく過ごしているからだと思います。・今も身体の痛みはありますか。社会で不自由なところはあるのか知りたいです↓身体の痛みは常にあります。日々、どこかが痛いです。でも疲れ具合とかに左右されるので、痛みがゼロではないですがすごく軽い日もあります。社会で不自由なところは、車いすで生活している上では、段差など物理的な障壁と車いすマークのある駐車場に一般の車が止められていたり、階段を回避するスロープのところに自転車などが止められていたりというモラルの問題に困ることもあります。・どうやって人生をうまくいくことができましたか。何を考えれば諦めない人になりますか↓日々、生きていると色んな問題に出会います。それは自分自身のことであったり周囲や家族のことであったり環境のことであったり様々だと思います。そんな中ですべてうまくいくとは限りません。限りませんがうまく行くように考えて行動することは大切だと思います。私の場合、自由がきかないことも多いので、とっさの判断で行動することは難しいです。その分、自然とその先をシュミレーションして行動するようになりました。「あーすれば、こうなるから、こうして。。。」という具合にです。そうするためには広い視野が必要です。ひとつのことに拘り過ぎないことが大切だと思います。私のことを諦めない人ととらえてくれているのかと思いますが、実はそんなことないです。色んな事、諦めも必要ですし、諦めざるを得ないことも人生にはありますよね。でも諦めて立ち止まることは良くないと思います。これがダメなら次に目を向けて挑戦していく気持ちが大切だと思っています。・自分の人生、辛いですか↓「辛い」か「辛くない」かは辛いですよ。他の質問のところにも書いていますが、日々、身体は痛いですし、車いす生活も決して自由じゃない。不便な事いっぱいです。でも、そんなことばかり言っていても何も始まらないので、それはそれと受け入れて前を向いて進むだけです。この質問をくれた方も人生辛い事あると思いますが、辛い事ばかりではないのではないでしょうか。みんな、それぞれ違いますが、みんなそれぞれ辛く同じです。・障害がなければどんなスポーツをやってみたいか↓障害がなけば、野球やサッカーをやってみたいです。・50歳の節目にしたいことは何ですか↓今回のような講演活動をもっとアピールして増やしていきたいなと思います。・スイーツはどんなのが好きですか↓スイーツはケーキとかプリンが好きです。・どのメーカーの車が好きですか。↓自分は1991年式の日産Fairlady300zxが好きです・他に乗りたい車はありますか↓私は子どもの頃から日産のスカイラインが好きです。数年前に2001年式のスカイラインを手にしました。1991年式の日産Fairlady300zxも好きですよ。買えないですけど、フェラーリに乗りたいです。・車くらい好きなことはなんですか・車以外に好きなことはなんですか↓車以外となると、やはり人とのコミュニケーションが好きです。50歳目前のおっさん同士がワーワー話している光景もどうかと思いますが、友人たちとそういう時間も作っていますし、今回の上映会のように皆さんと会話のキャッチボールができることが好きです。・今、一番幸せだと思う瞬間はなんですか↓日々、幸せな瞬間は自分が健康で一日一日を過ごせた時です。体調が悪くなると動けない日が続いてしまうので、毎日動いていられることが幸せです。そして今回のような上映会で皆さんに会って話せることが幸せです。
・今、一番楽しいことはなんですか・人生を楽しむコツはなんですか↓ドライブしたりする以外に今、楽しいことは今回の上映会のように、皆さんに映画を観てもらい、観るだけではなくてこうしてコミュニケーションできることが楽しいです。人生を楽しむコツは、何にでも興味を持って挑戦することです。
ミニバンの田中宏和さん、どうもありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
いつか天国で田中宏和運動全国大会で集まりましょう!
ほぼ幹事の田中宏和拝